突然ですが、「自然」と聞いて思い浮かべる風景はどんな風景でしょうか?コラム担当なかのひとです。
かつてESG経営やGXといった複雑なことがらをざっくり解説で、なんとなく環境経営が学べる。と好評のこのコラムにあたらしい風が加わります。
それが「30by30」環境省が軸となって、自然を守ろう。という環境保全の取り組みとなっています。
ただ、これまでの環境保全などと違うポイントがあります。
その違いを明らかにしつつ、30by30が皆様の企業経営に関わるのか?関わらないのか?
どっちなんだい?といった疑問を中心に書いていければと思います。
ということでここの疑問について、さっと回答だけしてしまうと、「今すぐには関わらないけど、そう遠くないうち(2,3年くらい先)に大きく関わることになる。」です。
「なぜ関わってくるのか?」について詳しくは、この後の内容をお読みください。
さて、冒頭の「自然」というとに戻ります。自然は、人によって白夜のカナダで針葉樹とユーコン川がゆったりとながれる大自然だったり、はたまた中南米に生息する幻の鳥と呼ばれるケッツアールが羽を広げる熱帯雨林、アフリカではライオンが100頭はいるかのような自然保護区の広がるサバンナの草原にジャングル。はたまた、ラムサール条約で保護されるような石垣島のマングローブ林が広がる汽水域、北海道にひろがる雪面の湿地と、思い浮かべる風景は人それぞれかもしれません。
なかのひとが自然と聞いてパッと思い出すのはこどものころ、家の近くで魚を見つけて追いかけた小川だったり、通学路の途中でセミを見つけて遊んだ原っぱと、とても雄大とはいえない身近な自然の風景です。
もちろん、日光や尾瀬といった自然も行ったことはありますし、フライフィッシングが趣味なので毎年のように川底が見えるような透明度の山の清流を登っているのですが、、、
自然や環境を大切にしよう、生物多様性を守ろう。というと、やはり身近な自然よりは、先にあげたような雄大で人の手がはいってこない原生林や人の手が入っていたとしても山の上などで標高が高く珍しい植物が咲いていたり、河の上流で綺麗なせせらぎのなかでそこにしか咲かない植物やそこにしかいない動物がいるなど、希少種の高い動植物がいることが多いです。
人に身近な環境にある自然は、どうしても開発工事の影響を受けやすく、なかなか守られることはありません。
家の近所のちょっとした川や原っぱなどの自然、田舎の里山や里川、街のなかにひろがる緑地といった身近な自然も含めて、いろんな生き物の住む生物多様性を守るアクション「30by30」にフロンティアジャパンが参加いたしました。
30by30とは
2030年までにあるものを守るために、30%以上にする。30年と30%のふたつをとって30by30となっています。
では何をするのか?というと、冒頭にもありましたが自然、とくに”生物多様性”を守るために自然共生サイトを日本の30%以上にすることです。
日本の30%というと、なんともざっくりした表現ですが、国土の30%をその自然共生サイトにするので壮大な計画といえます。なんせ圧倒的な存在感をほこる北海道を持ってしても約83,000㎢、日本の国土が378,000㎢と北海道全域を自然共生サイトにしたとしても21.95%と8.05%も足りません。岩手(約15,000㎢)で+4%に福島(13,780㎢)の3.6%を足したとしても、若干届かず、香川県(1,877㎢)を加えてようやく達成できる数字です。
ちなみこれは、陸の30%だけです。海も30%を自然共生サイトにする必要があります。
30by30の本題に入る前に、どうしてはじまったのか?について簡単に触れていきます。
きっかけは、たまに国際的な会議がありました。とニュースなどで耳にする「COP”なんたら”(10や15といった数字がついています。)」です。
まずはこのCOP”なんたら”について簡単に解説します。
COPなんたらは、COP〇〇と数字が1 つか2つ入るのですが、「COP」と同じコードを持つのに、テーマが違う会議がいくつか存在します。
・COP3 気候変動 1997年 京都開催 「気候変動枠組条約第3回締約国会議」あの京都議定書が記憶に残る
・COP10 生物多様性 2010年 愛知県開催 「生物多様性条約第10回締約国会議」愛・地球博(2005年)とは別物
・COP15 生物多様性2022年 モントリオール開催「生物多様性条約第15回締約国会議」先進国と途上国で揉めたのは気候変動のCOP15
・COP26 気候変動 2021 年 グラスゴー開催「気候変動枠組条約第26回締約国会議」気温上昇を1.5度に収めることが決まる。
ちなみに、砂漠化対処のCOP15も2022年にコートジボワールで開催されています。
COPなんたらを開催年数順に数字を並べかえると、3,10,26,15と数字の並びがごちゃごちゃになってしまうのですが、それもそのはず。このCOPなんたらには、3つのテーマがあってそれぞれで開催回数、開催年度が違うからです。
1.気候変動
2.生物多様性
3.砂漠化対策
日本でよくニュースで取り上げられるCOPは、1.気候変動と2.生物多様性です。
30by30は、生物多様性のCOP10でつくられた目標値「陸域の17%、海域の10%が保護地域等により保全される」がきっかけになって立ちががりました。
この世界目標をさらに、枠組みを広げて「30%」と生物多様性のCOP15にて決められました。
出典:環境省ホームページ 「30by30ロードマップ」
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
ちなみに、日本の現状は2022年9月時点では、 陸域20.5%、海域13.3%という数値になっています。もうすでに北海道の面積に等しいくらいの自然共生サイトがあります。
のこりは「陸で9.5% 海で16.7%」です。
どんな企業や団体が参加しているのか
さて、そんな30by30ですが、どんな企業や団体が参加しているのか?
この関わる企業や団体によってどれだけの規模のものか?重要度がどれくらいのものか?
は理解できるかと思います。
・日本景観生態学会
・日本生態系協会
といった環境に関わる学会や協会はもちろん
・日本野鳥の会
など耳にされたことがあるような団体も参加しています。
経済界では
・日本経団連
・出光興産
・ANAホールディングス
・トヨタ自動車
・日本航空
・本田技研工業
といった名だたる企業も名をつらねます。
2023年11月8日現在では[ 298企業 / 50自治体 / 170NPO / 68個人 / 23コアメンバー ]という構成になっています。
企業経営にどんなメリットがある?
冒頭でも書きましたが、30by30はいまのところ参加したからといっていますぐに企業経営になにか有利になるというメリットはまだ多くありません。
いまのところでは、企業の森や社有林をはじめ、工場や建物の敷地内にビオトープなどを所有していて生物多様性に貢献している企業が30by30に参加すると、所有している森やビオトープなどがOECMという自然生態系の保全エリアとしての認定がされます。
OECM認定がされると、自然保護などを取りまとめている国際データベースに掲載されます。
出典:環境省ホームページ 「30by30OECM認定により期待される効果」
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
仮に企業が所有している森やビオトープがOECMに登録されれば、ESG投資などの評価に関わってきてその登録の有無が企業の評価に影響をします。
ただ、これは気候変動での脱炭素の取り組みのように数値化できるものではないので、どれくらいのインパクトがあるといいにくく、まだモヤっとしています(このあたりは継続的に注視して何かあれば追記していきます)。
30by30に参加するだけでは、今のところSDGsと似た感じで「こういうアクションをしています!」とPRできる。ESG経営にちょっと有利になる。というイメージで捉えておくと問題なさそうです。
ただ、この30by30についてといいますか、生物多様性と企業の関わり方については、気候変動や脱炭素のGHG計算(GHGプロトコル)と同じように取り組むことで企業の経営に前向きな影響がある仕組みづくりが進められています。これがパキッとまとめられると、相当なインパクトになり、取り組むことでこんなメリットがこれくらいあります。と試算できるようにもなります。
「2030年までに世界の陸と海の30%を保全する“30by30” 国内の企業・金融の役割とは」にて「世界のお金の流れが、ネイチャーポジティブ、自然を増やすという方向に変わり始めている」(MS&ADインターリスク総研:原口真氏)という記事にも表れています。
引用:サスティナブルブランドジャパン
https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1209950_1501.html
環境と企業経営が密接につながる仕組みづくりには、気候変動での脱炭素と生物多様性保全の取り組みとで取り組み方や評価の仕方で違いがあります。
先のMS&ADインターリスク総研:原口真氏は、「温室効果ガスは排出した場所と影響を受ける場所が必ずしもつながっていない。しかし、自然関連の課題は必ず場所に紐づいている。その場所に行かなければ課題やリスクが分からず、排出算定(スコープ1 +2+3)によってサプライチェーンを評価するような一律的なアプローチでは対応できない。これが企業や金融機関にとって大きな課題になる。」と語っています。
いまはモヤっとしているこのあたりがパキッと明快になってくると生物多様性と企業の関わりのフラッグシップ的な存在として30by30は、一層活性化すると思われます。
ネイチャーポジティブ
さて、かなり話が変わりますが、カレーの決め手といったらなんでしょうか?
ゆっくりじっくりと炒めた飴色玉ねぎに、炒めて煮崩れるちょっと前のにんじん、カレーのルーにはりんごと蜂蜜が隠し味を…と、そんな野菜の旨みたっぷりのおいしいカレーが、このままいくと、近い将来に食べられなくなるかもしれません。
これは、ミツバチの減少が原因です。
世界からミツバチが消えてしまうとりんご、なし、メロン、いちごといったメジャーな果物は受粉しなくなります。
野菜では、たまねぎ、にんじんなども種が作れなくなってしまいます。
そうなると、食卓のカレーからは、たまねぎとにんじんが消えて、りんごに、はちみつの隠し味もいれられなくなって、お肉とジャガイモだけの味気ないものになってしまいます。
まさにカレーショック。。。
気候変動では、秋刀魚にその影響がおよんで海遊する海域が日本近海から遠くなってしまって獲れなくなったりと、気候変動でも生物多様性でも食卓への影響はすでに起きてきています。
おいしいカレーが食卓に上がり続けるためにも取り組みたいのが30by30です。
そして30by30が生物多様性の保護に貢献することを語る上でどうしても切り離せないのが「ネイチャーポジティブと生物多様性の指標」です。
いま現在、生物多様性として地球上のいきものはどんどんその数を減らしています。仮にこの状態をネイチャーネガティブとします。
このマイナス(ネガティブ)な状況に歯止めをかけて、生物多様性が守られるだけでなく増やすプラス(ポジティブ)な状態にすることが世界的に求められています。
30by30のアクションは、生物多様性のコアになる森や里山、里川、湿地などの保全対象を日本の30%にまで増やすこと。
30by30のゴールは、2030年までに生物多様性の指標をプラス(ポジティブ)へと転換させて継続することです。
これには、国や自治体、NPOだけのレベルではもう間に合わず、企業の経営を巻き込んで具体的な取り組みをしていかないと追いつかないものです。
そのため先にもあげましたが、30by30や生物多様性の自然共生サイトの取り組みなどを企業の経営と密接に結びつける仕組みづくりが進められています。
いまは、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)がこれにあたります(まだベータ版ということですが)。
出展:日本経済新聞社(NIKKEI COMPASS)より
https://www.nikkei.com/compass/theme/99764
気候変動では、脱炭素。GHGプロトコルに対して、
生物多様性では、〇〇と定義しにくいのが実情ですが、ESG投資では、企業が生物多様性を守る取り組みとしてTNFDを評価する動きがすでにあるようです。
また、欧米では、まだ確定していない定義やルールでも先行して事例を作ってしまい、自分たちに有利なものに持っていく動きもあるようなので、日本も「ルールが決まってから」ではなく、曖昧ななかで走る覚悟をもっていそぎこの取り組みを進めていく必要があるのかもしれません。
また、2030年までにということなので、2023年末のいま現在で残された時間はあと6年とちょっと。おそらく1,2年でルールがクリアになってきて2,3年で企業経営にGHG計算などのように関わってくる。と思われます。
30by30的な事例からみえる未来30by30
30by30として企業や自治体が密接に結びついて、地域の課題解決になりつつ生物多様性を守る先進的な事例として、地方銀行と自治体が幹事となって地域の課題をクリアにするために動いている事例があります。
熊本県の球磨地区が2020年の豪雨で水害被害にいました。その流域での治水工事で、ダムや護岸といった土木工事的なものに加えて、田んぼを活用した自然の浸透治水、雨庭といわれる河川への放流に時差をつける市内遊水池群の構築などを進めて、雨が降った際にできるだけ土中への浸透、溢れた雨水も排水溝に流すのではなく遊水をさせて分散的に時間差をつけ河川放流をすることで、河川の流量が急激に増えないようにして、洪水に強いまちづくりとなる仕組みづくりを実施している事例もあるといいます。
丁寧に管理された里山里川には、豪雨で降った雨を一時的にプールして土中に浸透。染み込んだ雨は表面張力で引っ張り合ってとてつもない量の保水を成せると聞いたことがあります。
今回の仕組みづくりのなかには大学と共同で里山里川治水による自然保水量・浸透量をAIやICTを用いて解析。その効果を検証するプロジェクトにもなっているといいます。
もし、その効果検証がポジティブなものであれば、将来的に治水目的の土木工事に里山里川の保全が含まれるかもかもしれません。
Wood+がなぜ参加したのか
Wood+は、これまでSDGsや脱炭素に貢献する木製ノベルティという発信をしていきましたが、日本の森とくに里山の森や林業などで人の手が入ってきた森の問題は、日本の森の木を使わなくなったことで林業などの人の手が入らなくなったことにあります。
先にもあった脱炭素のGHGプロトコルのように、生物多様性を企業経営と結びつけるにあたってむずかしいのは、所有している森がどうなっているのか?適切に管理されているのか?放置されているのか?などで大きくその状況が変わってしまいます。そのため、どうやって評価するのか?検討もつかない状況といえます。
ただ、ここ数年で圧倒的な進化を遂げたAI やICTなどかつてないテクノロジーもありますし、GoogleMAPなどもインフラのようになり、驚異的に進化していることを考えると衛星画像と3D地形データなどから生物多様性を計り取るような仕組みができるような気もします。
先にあげた地方銀行と大学の共同研究で、里山里川の治水についてなどもかつてはなんとなく効果あるよねといった感じだった目に見えないものが可視化される時代。
ほんとうに自然のため、生物多様性を守るための指標がつくられるのもそう遠くないとコラム担当なかのひとは思います。
そうなったときに、やはりただ自然共生サイトを持っています。だけではこの指標での評価につながらなくなるはずです。
とくに里山や林業の人の手が入ってきた人工林などは、木を切って適切に人の手を入れ続けることがもとめられます。
わたしたちは、これまでも同じことを言い続けていますが、そういった森の木をつかうことで、日本の森に人の手を取り戻すサイクルをつくります。
社有林や企業の森を持っている企業や団体様であれば、適切な森の管理につながるようなお手伝いができると思い、30by30に参加しました。
今現在で、森をもっていない、里山里川をもっていないという企業様でも30by30に貢献したい。つなげたい。ということであれば私たちにいちど相談ください。
まとめ
30by30に参加しました。という内容でした。
企業の経営には、気候変動と生物多様性の2つへの取り組みが必要な時代になってきていてよりいっそう環境経営の時代になってきていると言えそうです。
ちなみにですが、実家に帰った際に思い出の小川や原っぱを散歩がてら見に行ったら、小川はまだ近所の子供達の遊び場になっていて、原っぱの一部は住宅地となっていましたが、まだ残っていました。
人の生活しやすさや開発によって、埋め立てられてしまったり、コンクリートなどで固められてしまったりと、これまで身近にある生物多様性は強く守られることは稀でしたが、これからは変わっていくと思います。
しかしながら、今年の夏はとにかく暑くて、その影響があるのかないのかわかりませんが、クマがあちこちでたくさん人里に出現。クマの個体数が去年と今年とで急に増えるということは確率的にはあまりないような気がするので、生息域でなにかしらの変化があって人里に降りてこなくてはならなくなっている。という推測が立ちます。
熊による獣害がこのまま続けば、農業や林業にも差し支えます。それ以外にも、さまざまな影響が及んでいくとより深刻な問題にもなっていきます。それは単純にそこに住んでいる人に限らず、希少資源が採れなくなるなどで企業経営に関わっていくと言われています。
気候変動と生物多様性の2つはこれから先の企業経営に欠かせなくなってきます。
EYジャパン「生物多様性が想像以上にビジネスにとって重要である理由」
https://www.ey.com/ja_jp/assurance/why-biodiversity-may-be-more-importantto-your-business-than-you-realize
でも、「生物多様性に悪影響を及ぼす企業は、資本調達が難しくなる可能性があります。」と見出しにも書かれています。
私たちの木のノベルティグッズを用いることは、小さなアクションかもしれませんが、自然、生物多様性のためになるものです。
私たちの木製ノベルティを使った販促は、”未来”をつくります。
これから先の環境経営の時代に、その販促は、どんな未来を作りますか?
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