ここ数年、ビジネスシーンで特に注目されているものに「地政学」があります。
今回のコラムでは、地政学とノベルティグッズの関係について、SDGsとの関係についてを考えていきたいと思います。
まず結論を話してしまうと、「地政学とノベルティグッズ、販促は密接に関わる。リスク回避にはSDGsやESG視点が鍵になる。」というところです。
例えば、ある世界的なスポーツブランドが人気製品の縫製などの工程を海外の企業に下請けを依頼していました。
その企業は、生産についてしっかりと管理していると文書なども提出していたようですが、実態はかけ離れていて搾取的な労働が行われていて、工場が入っていた建物も老朽化が進み倒壊して大問題になりました。
そのスポーツブランドは、決してそれを主導していたわけではなく、下請けの企業がおこなったことでしたが、責任を問われて世界的な不買運動に発展。数年間で何兆円にものぼる存在があったといいます。
ノベルティグッズなどではさらにこのリスクが高くなることが予測できます。
というのも、ノベルティグッズの基本的なビジネスモデルは、たくさんつくってたくさん配る。大量生産・大量消費のバラマキと呼ばれるもので、その生産工程が問題がないかを把握するために予算をとりにくいことなどが問題として強くあります。これを裏付けるように日本でも話題になった海外の某超低単価ファストファッションブランドやECサイトの商品で、安全基準から大きく外れた有害物質が検出された。といったこともありました。
意外なことかもしれませんが、これらも地政学の一つといえば一つです。
また、文化的なところで言うと、中国の旧正月や春節では長期のお休みになり工場なども稼働しなくなります。私たちも含むんで木工加工関連では、中国で製造されている企業様も多いので春節や旧正月を挟んだ受注などでたまに、この期間だけどうにかとお問い合わせをいただくことがあります。
これは日本も正月休みはどこもお休みになるところが多いのと似ていますね。これも地政学的な文化の違いのひとつです。
今回のコラムでは、ノベルティなど低単価、大量生産でとくに起きやすいといわれるこういう地政学的な事柄を踏まえて、想定できるリスクを避けて販促やプロモーションをしていくにはどうしたらいいのかまでをまとめていきます。
地政学とは?なぜ近年注目されている?
さて、地政学って一体全体なんなの?と言われると、地政学は学という文字がある通りで学問のひとつです。
地政学の自体は、1900年のはじめごろにスウェーデンの学者「ルドフル・チェーレン」が提唱したもので、歴史はそこそこ長いものです。
地政学の中身は、ざっくり解説すると国によって文化や生活・経済が大きく違うことで、いいことがあったり悪いことがあったりということを予測したりするものです。その国がどんな場所にあるか、海に面しているのか?内陸なのか?どんなものが採れて、どんなものが採れないか?どんなことが得意なのか?文化など地理や政治・経済が大きく影響しているということを学ぶ学問です。
例えば、日本は海に囲まれている島国です、日本の場合、車の製造・販売で世界的なレベルにありますが、これがもし内陸国だったら作った車を運ぶのに陸路(道路や線路)をつくって海に運び出す必要があります。
いまの日本みたいに海に至る所が面していて海運・船がつかえれば大きな船に乗せて一回でたくさんおくれます。ですが、陸路だと線路かトラックに限られてしまい一度にたくさん運ぶことが難しくなります。
また、陸路をつくっても、海に面している国との関係が悪くなり「日本の車は私たちの国にいれない」とか、「港の使用料をたくさん払いなさい」と制限やよけいな課金をされてしまうと車をたくさん売ることが難しくなってしまいます。
なぜ近年、地政学が注目されているのか?
ちょっと懐かしい話になってしまいますが、2020年ごろに起きた世界的な流行病が地政学へ注目を集めるきっかけになったと言われています。
あのころを思い出していただきたいのですが、リモートワークが急に進み、外食や観光を控えるといった身近な変化は記憶にあると思います。それだけでなく世界各地で都市のロックダウンや、出入国規制と、ひとやものの往来が制限されました。
これによって医療関係では輸入に頼っていた物資が入ってこなくなり不足するなどの問題が詳らかになりました。
2020年前後に結構な危機を強制的に体験してしまったことで、それまで地政学が提唱してきた「こういうリスクがあります。」と言葉で理解はできていたことが、実体験として目の当たりにし、心で理解できたことがきっかけで地政学って結構すごいといわれるようになったきっかけのひとつといわれています。
地政学的な判断の具体的な事例
地政学的な判断で、具体的にリスクを避けた事例のひとつとしてとくに有名なものに半導体工場があります。
半導体は、いまや多くの商品につかわれていて、供給がされなくなると経済はもちろん、生活などにも大きな影響があります。
これまでは台湾に大きな工場がありましたが、日本では熊本に、ほかにはアメリカなどもに工場が移転が発表されています。
ノベルティや木製品を用いた販促・販売の地政学的影響
次にノベルティや木製品を用いたときに発生する地政学の影響についてです。
ノベルティグッズは、たくさん配って企業名やサービス名、商品名などの認知度を広めるために用いられることがおおく、そのビジネスモデルからできるだけ安くつくることが求められることが多いです。
そのため、多くのノベルティグッズは海外の人件費や製造コストの安価な国で作られることが多いものです。また、同様に日本で販売されている木製品も海外で製造されて日本で安価に販売されているものが多いです。
販促や販売での地政学的な影響としては、これもここ数年で注目が集まるSDGsやESGがあります。
SDGsやESGでとくに言われることとして、脱炭素、気候変動の環境配慮の面で海外でつくって国内へ持ってくることの余分な炭素発生と、労働環境や就労環境などの透明性、部材などや産地の証明がとれるかのトレーサビリティがあります。
とくに、ESGではプライム市場へ上場している企業ではGHG(温室効果ガス)排出量を計算して提示することが義務になってきています。
また、海外の製造拠点で人権的な問題を抱えてしまっていたりすると、預かり知らぬことでも問題となってしまうことがあります。
さらに上げると、低単価のグッズで人気な海外の某ファストファッションやECサイトでの基準値を大きくこえた有害物質の検出と、品質の問題は価格が下がるとそれに比例するようにあがっていきます。
しっかりと、低価格でもトレーサビリティが効くかどうかは押さえておかないと思わぬリスクにさらされてしまうこともあります。
地政学的リスク回避になぜSDGsやESGが?
ここまでいろんな地政学的なことを取り上げてきました。ここからは地政学的なリスクの回避について取り上げていきます。
私たちの事業も踏まえて、今回はノベルティグッズや木製品をもちいた販促や販売にしぼって取り上げていきます。
基本的にノベルティグッズや木製品の地政学的なリスクは、1.生産工程の環境的な問題 2.就労環境など社会的な問題 3.原料のトレーサビリティなど品質の問題 この3つになります。この3つの問題への対応がしっかりとしていれば、地政学での大きなリスクは避けることができます。
1.生産工程の環境的な問題 … ものをつくるのに大量の炭素が発生していないか?ほか排気ガス廃液の取り扱いは?など
2.就労環境など社会的な問題 … 劣悪な就労環境や搾取的な就労条件ではないか?強制労働などではないか?など
3.原料の品質管理の問題 … 違法な手段で原材料が購入されていないか?トレーサビリティは有効に働くか?など
どうしても、安価にものをつくるとなると3つのいずれかを犠牲にしてしまうということもあるかもしれません。
日本国内でも、安価にサービスを展開するために過酷な労働を強いたり、やりがい搾取が問題になったブラック企業の問題もこの2の問題にあたります。
こういったことはお問い合わせをして納品された段階では表立って問題にはなることはないこともあって、気にはなるものの大丈夫だろう。と気にしないか、聞いたらわるいかなと、ノベルティをつくっているメーカーや取り扱っている企業に「大丈夫ですか?」と、疑いベースで聞くわけにはいかないとおもうので、リスクを避ける方法についてまとめました。
1 つは、トレーサビリティです。産地証明などで原材料などが搾取的でないか、環境負荷がかかっていないか?を明らかにするものです。もう一つは、認証です。木ならFSC®認証などがあることです。
「SDGsやESG経営で、販促にトレーサビリティや認証が必要といわれていまして…」とメーカーに聞いてちゃんとした答え「認証や証明書出せます。」が返ってくるか、とこないかである程度はリスク回避になります。
認証や証明がだせるということは、製造ラインをしっかりと把握してコントロールができていることです。出せない場合は把握も曖昧でコントロールができていない可能性があります。
まとめ
ここ数年、なにかと耳にする機会が増えた「地政学」とノベルティや販促の関係についてでした。
地政学的なこととしては、製造メーカーがなにかやってしまうケースと、海外などに製造拠点がある場合に有事や国同士の関係が悪くなったりでものが入ってこなくなったりといったこともあります。
気をつけても、突発的なことが起きたりではなかなか対応しにくいこともあると思います。
ただ、そういった場合には市場も理解してくれるケースが多いと思います。
どちらかといえば、委託先、受注先が違法な操業を行っていたり、環境負荷がたかい原料を用いていたりと言ったケースで問題が大きくなると思います。
その場合は、どんなに知らなかったといっても責任を追及されてしまいます。
SDGsやESG経営はもちろん、プライム市場に上場されていたりすると、販促やプロモーションでの炎上はかなり大きな問題となることもあります。
できるだけ、リスクを把握して最悪の事態が起きないようにしていきたいですね。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
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