
2010年、まだ環境配慮やサスティナブルといった言葉がいまほど一般的ではなかった時代に、株式会社イトーキ様では、国産の木を活用して循環を目指すEconifa(エコニファ)と呼ばれる取り組みをスタートされました。
「木があるだけで、もっと気持ちよい場所になる。」
そんなコンセプトのもと、地域材の活用をはじめ、日本で問題になっている管理されなくなった人工林の木の活用などを通じて、オフィス家具や什器を中心にして木を取りいれて、「働き心地のよい空間」の追求を目指されています。
Econifaは、オフィスの木質化を軸にして、地産地消の仕組みづくり、木の炭素固定によるCO2削減、適切な森の維持管理とそれによって守られる森の生物多様性の保全などの”今”の企業経営で欠かせないTCFDやTNFDなどにもつながる時代を先んじた先験的な取り組みとなっています。
今回のお客様インタビューは、そんなイトーキ様の株主優待に私たちのアイテムを採用いただいた経緯について、また、私たちの環境に配慮するノベルティやものづくりがどのように評価していただいたのか、さらに今回のグッズでは、とくに特徴的だった家具の端材を活用(アップサイクル)することなど、選定の背景を株式会社イトーキ コーポレートコミュニケーション統括部IR・SR部 IR課 前田悠希様に伺いました。
インタビュー
株式会社イトーキ
コーポレートコミュニケーション統括部
IR・SR部 IR課
前田悠希様
イトーキらしい“ぬくもり”を株主優待に
「サスティナブルなアイテムにするという発想は、自然に立ち上がったんです。」
イトーキ様では、企業の姿勢として、環境への貢献や社会への配慮を行うことが根付いていることもあって株主優待を「環境配慮のためにイトーキが大切にしている思いを届ける機会」としてとらえて、サスティナブルなアイテムにしようと、社内からごく自然に生まれたといいます。
サスティナブルな株主優待品が“自然に立ち上がった”背景
イトーキ様では、先のEconifaをはじめ商品にEco Levelとして環境貢献の度合いを占める自社認証を掲載しています。こういった環境への貢献や社会への配慮を企業の根幹に据えた経営を長年にわたって実践されていて、サステナビリティが、特別なテーマや市場のニーズで求められて動くのではなく、“企業としての当たり前”として根づいている一つの企業文化ともいえます。
そのため、株主優待品を検討する際も「贈る」という行為を超え、*“事業活動を通じて課題解決に貢献しながら、社会価値・環境価値を創出するイトーキの理念を伝える機会に*という発想がごく自然に生まれました。
「サスティナブルなアイテムにするという発想は、自然に立ち上がった。」
この言葉には、そんな企業文化の土壌があふれ出ているように思います。
3つのサスティナブルな素材に込められたストーリー

2024年の株主優待では、滋賀県近江八幡市にある滋賀工場にて制作したチェア張地の端材を使用したポーチ、淀川水系(琵琶湖・淀川)に生息している葦と和紙から作られた糸を使用したストール、家具の展示会ブースにて使用した構造材の端材(ヒノキ)を利活用し、アップサイクルされたアロマウッドなどを詰め合わせた、サスティナブルギフトセットを株主優待品としました。

それぞれのアイテムにこめられたストーリーを詳しく見ていきます。
琵琶湖の葦からつくられたストール

琵琶湖では、湖の富栄養化が進み赤潮やアオコの大量発生などの問題がありました。この対策として葦の自然浄化を進めています。冬の期間に刈ることで若くて元気な葦が育つサイクルのなかで、刈り取った葦を廃棄せずストールにすることで水質浄化サイクルの循環の促進に貢献しています。
チェア張地の端材で制作したポーチ

イトーキ様の椅子の座面、背もたれに用いる椅子の布などの張地。これは、椅子のデザインにあわせて大きな布地を型で切り取って使用するところ以外は廃棄材となっていました。この廃棄材を有効活用し、おしゃれなポーチにしています。
展示会ブースの木部構造をアロマウッドへ

展示会では、いかにブース全体でコンセプトや世界観を表現して、直観的にお客様の目を惹けるかが成功をわけるカギになります。大型の展示什器などをつくることがあるイトーキ様では、この展示什器で用いた木材をアップサイクルし、アロマウッドを製作していました。
パートナー企業との共創による新たな挑戦
2025年の株主優待では、このサスティナブルな取り組みをさらに一歩前進させることに。
イトーキ様に関わるパートナー企業にも、さまざまな提案を募っていっそうサスティナブルなアイテムをつくることになったといいます。
家具の端材をアップサイクル。理念をカタチにした“つみき”づくり
このパートナー企業へと取り組みの裾野を広げるなかで、私たちにも声がかかりサスティナブルなアイテムの提案がはじまりました。
当初は、家具づくりで発生するおがくずや端材などを木の粉にし、樹脂に混ぜてつくるサスティナブルなプラスチックタンブラー「Kitto+」が候補にあがっていました。
しかし、検討を進める中で端材の姿をそのまま活かしたイトーキらしいアイテム、そして、株主様に喜んでいただけるアイテムは何かと考えたとき、幅広い世代に株主様がいらっしゃることから、「どの世代の方々にとっても心に残るものにしたい」
そうした想いから、最終的に選ばれたものが“つみき”でした。

お子さん、お孫さんが安心して手に取れる木のぬくもり、大人にはインテリアとしてお部屋に飾っていただく。
多くの提案の中でも際立った存在感が、今回の提案の後押しとなりました。
栗の木をつかい一枚のテーブルのような仕上がりの家具づくり

今回のつみきは、イトーキ様の家具づくりと深く関わっています。
同社の代表的なビッグテーブル「シルタ」には、栗の木が使われています。栗の木目は、力強い直線的なこまやかさが際立つ木です。もちろん広葉樹ならではの細やかな木目の重厚さと、長く使い続けられる丈夫さを、たしかに兼ね備えています。

そんな栗の木を使用したビッグテーブル「シルタ」で特徴的なのは、まるでテーブル一枚の板のように見えることです。実際に、この規模の一枚板を使うとなると、その重量だけでも相当なものになってしまいテーブルの足などもこんなに細く繊細な仕上がりにすることはできません。
自然な一枚板のテーブルに見せる工夫

シルタでは、この一枚板のテーブルに見せながら繊細な脚部を実現するために様々な工夫がなされています。
テーブルの天板は一枚板に見えますが、複数の板を組み合わせて一枚に見せています。木目や木の色などをできるだけ合わせる繊細なこだわりが伺えます。そして組み合わせる板の内部は、くり抜いて重量を軽くしながら補強材で強度を補って一枚のテーブルでありながら重量を軽くすることが実現されています。
ただ、これだけだと大きなテーブルに見えはしますが、自然な一枚板のように見えません。

自然な仕上がりの秘密は、上の写真にもあるテーブル側面に施された木のもつ自然な輪郭にあります。
これは、木端(こば)や、業界では「みみ」と呼ばれる木の外側の自然な曲線のある輪郭です。この木端を、テーブルの側面にとりつけることで、まるで自然な一枚板のように見える仕上がりになっています。

こういったこだわりや、仕上げを徹底することは、イトーキ様の技術の結晶でありながらも、どこか素朴で、自然のまま。「つくり込む」ことと「ありのままに活かす」こと。その両立が、シルタの静かな美しさやぬくもりを生み出しています。
家具の端材から生まれた、“森と人をつなぐつみき”
「アップサイクルのつみきも。”それ、いいね!”と」
そんなシルタの工夫や仕上げに欠かせない木端(こば)通称ミミ材はこれまでつかわれることがありませんでした。そんなミミ材を活かせないか?そうしてアップサイクルされたのが今回のつみきです。
シルタの廃棄材を活用してつみきをつくる。
この提案は社内でも「イトーキらしい」と前向きに受け止められ、積極的に検討が進んでいったといいます。
手仕事が生む安心感
このつみきをつくるにあたって静岡県にあるパートナー企業の工場へ、つみきの素材となる端材と家具づくりの工程を視察したといいます。
素材となった栗の木は、力強い木目と重厚感が特徴の家具材であり、一般的におもちゃには使われません。
実際に、さわってみたつみきは、年輪がぎゅっと詰まった重厚な風合い、手にしたときのなめらかな質感がありました。
そして木と木を打ち合わせたときに響く、カーンと澄んだ高い音は、とても耳にやさしく、心に静かに響くものがありました。
ひとつひとつが、自然素材ならではの“ぬくもり”をまとい、手に取った人に新鮮な驚きを届けてくれます。そこには家具「シルタ」の息遣いが確かに宿り、子どもだけでなく、大人の心にも静かに響く存在感を放っています。
デザインに込められた理念

このつみきの木の風合いを活かしたデザインの中に、さりげなく企業アイデンティティ「ナインストローク」を織り込むことで、つみきは単なるノベルティではなく「イトーキらしさ」を感じさせるプロダクトへと仕上がりました。

実物を手に取った社内外の皆様からも「かわいい」「つみきをさわるの久しぶり」「木の安心感に感動した」と感想をいただいたといいます。
子どもには遊び道具として、大人にはインテリアとして。共感が広がっています。
理念と共創が生んだ“イトーキらしい株主優待”

「つみきを選んだことに「イトーキらしさ」がありました。」
巾着袋にぴったりと収まる可愛らしい仕上がりは、株主優待として手に取ったときに思わず笑顔になれる。
さらに、同梱された取り扱い説明書にはQRコードでEconifaのサイト紹介へのリンクや、シルタ商品のイラストが描かれ、細部にまで気づかいが行き届いています。
こうした細やかなデザインの積み重ねが、ただのつみきではなく「イトーキならではのギフト」としての価値を生み出しています。
また、つみきは家具「シルタ」の端材を用いるため、必要な個数生産ができるかわからない可能性もありました。
しかし、数が足りない際には、「加工方法などで調整できます。」といった不安を解消する提案を営業担当からうけたことなど、安心感がありとてもうれしかったといいます。


まとめ “イトーキらしさ”が導く、サスティナブルな未来のかたち
国産木材の循環を軸に、TCFDやTNFDといった国際的な開示フレームワークにも通じるEconifaの取り組みを2010年からはじめられ、Eco Levelを商品に記載されたりと、会社の文化として、時代を先駆けて「サスティナブル」であること、環境と人の共生が根付いているイトーキ様。
そこから生まれた今回の株主優待の“つみき”は、単なるアップサイクル製品ではなく、 理念と共創が重なり合って生まれた「体験価値のあるギフト」に仕上がっていました。
家具づくりの現場で受け継がれてきた“手の仕事”が、 森のめぐみをやさしく包み込み、ひとつひとつのつみきに“ぬくもり”を吹き込んでいます。
手に取った瞬間のなめらかさ、木と木が響き合う澄んだ音、そのすべてが、イトーキ様の「ものづくりに宿る哲学」を静かに伝えてくれます。
森と人、つくる人と贈る人。
そのすべてをやさしくつなぐ“ぬくもりの循環”が、これからのサスティナブルな未来を導いていく
この“つみき”が、そんな想いをかたちにした“イトーキらしさ”に、少しでも貢献できているとすれば、これほど嬉しいことはありません。
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